命の実感がなくなる・・・

命の実感がなくなる・・・

猫の評判
猫の評判-ランク5
世界にたったひとつの犬と私の物語
著者/渡辺 眞子
出版社/河出書房新社

最近は、どこを歩いても純血種と思しき犬にばかりぶち当たる。その昔は、どうすればこんな犬が生まれるのだろうというぐらい、とんでもないところにブチ模様があったり、秋田犬のようなシェパードのようなといった風情の、摩訶不思議な犬がいたものだった。純血種なんていうものが急にもてはやされるようになったのはいつごろからのことなのだろう。

今から10数年前、 ある消費者金融の会社がチワワを使ったテレビCMを放映していた。それが引き金になっているような気がしないでもない。あまりはっきりと覚えてはいないのだけれど、そのCMの中で、俳優がドアかなにかを開けると、チワワの大群が躍り出てくるという場面があった。そのCMが流れ始めたころから、鈴おばさんの周囲でも、チワワを飼う人が急に増えはじめ、鈴おばさんは、そのあまりに不自然な小ささと、すぐにでも壊れてしまいそうな脆い雰囲気に、人が命に手を加えた傲慢さを感じて、なんだかなあと思った記憶がある。

その後このCMは、チワワの愛らしさが、利息制限法違反の、無効な金利を請求するローン会社だという実態を隠してしまっているとして批判を浴び、自粛するという憂き目にあったらしい。

チワワを使ったCMは、ソフトなイメージに騙されたたくさんの人をローン地獄に引きずりこんだだけでは飽き足らず、純血種の犬猫で漁夫の利を得ようとする悪質ブリーダーを急増させたという罪も犯していたのだ。ローン地獄ならぬペット地獄。

動物愛護センターに持ち込まれる犬猫も、最近は純血種がずいぶん増えているらしい。ブリーダーが、こどもを産めなくなった(正確に言えば、年齢的に、高く売れる質の良い子犬や子猫を産めなくなった)母犬、母猫を、そして売り物にならない「品質」の子犬や子猫を持ち込んでくるケースもかなり多いそうだけれど、中には、妻がもう飽きたと言っているからと連れてくる「アホ」な夫もいて、施設の職員が説得しても、もう次を買ったからと言って置いていってしまうのだと言う。

先に大阪で起きた育児放棄殺人事件を目にしたとき、ふと思い浮かんだのが、こうした純血種の犬猫たちの悲劇だった。あの事件も、命をモノとしてしか考えられなかった母親が引起した事件だったのではないだろうか。こんな世の中で、起こるべきして起きた事件のように思えてならない。子供はペット同然、育てることに飽きてしまったら棄ててしまえばいいという、そんな世の中。

野良犬や野良猫。必死で生きるその存在の一切から目隠しをされて育った子供たちは、生きるということがどういうことなのか、命というものがどういうものなのかを知る機会のないまま、大人になってしまう。「命」はペットショップから買ってくるもの。そんな発想が平然とまかりとおれば、命を命とも思わない人間が増えても、別に不思議なことではない。

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鈴の屋書店は、鈴おばさんと飼い猫2匹でお店番をしている片田舎の小さな本屋さん。他人さまのお書きになった本を売っているだけじゃァ、あくびも出ようってもの・・・ってわけで、政治、社会、自然、その他モロモロ、鈴おばさんの思うことをぼちぼち書いてみようと思います。どうぞご贔屓のほど。

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